X-T2との思い出
X-T2との出会い
X-T2のことを知ったのは父の勧めだった。
私は大学に入り、自分のカメラを持ちたいと思い、今買うならSonyのαシリーズなどのフルサイズのミラーレスカメラだろうと考えていた。
だが、その取り回しの難しさや価格の高さに圧倒されていると、
富士フィルムのカメラを父親から勧められたことにより、私はX-T2と出会った。
X-T2は富士フィルムの販売していたAPS-Cサイズの一眼ミラーレスカメラであり、長所はフィルムシミュレーションというカラーやモノクロフィルムの色合いを再現できる設定が組まれていることだった。
元来古いものや、廃墟に惹かれていた父の影響で私もそのようなものに興味が出ていたので、このカメラを買うことにした。
X-T2に触る
X-T2に対する印象は、APS-Cサイズという取り回しやすくかつそれほど小さくないセンサーサイズに魅力を感じていた、
ということはなく、
はっきり言って妥協した感じがあった。
しかし、実際に触ってみると、なるほど高級感がそれなりにあり、操作してみると、ぬるぬると回転するズームリングが心地よかったり、同じ構図でもフィルムシミュレーションで変えてみて撮ってみたりと、いろいろな楽しみ方があると知ることが出来た。
オールドレンズとの調和
父が持つフィルムカメラに使っていたレンズをどうやらこのミラーレスカメラには使えるらしいということで、マウントアダプターを格安のものを用意して使ってみた。
すると、現行のレンズでは体感できない味わいのある写真が撮れるではないか。
私はこのオールドレンズというもの、特にレンジファインダー用のものに特別惹かれるものがあったので、それを使ってよく写真を撮りに行った。
どこに行くにも、横にいる。
私は車を運転するようになると、横には彼女
ではなくパンパンの荷物とX-T2を載せて宮城県から東北各地を旅した。
いいなと思った景色があれば、電源を入れて、「チャッ」という音がなれば準備完了である。
あとは気の向くままにシャッターを押せばよいのであった。
東北は田舎なので気軽に路肩に止めれるのもよかった。私が見た景色を誰かに届けたいと思えたのも、このカメラのおかげなのだと思えた。
最後は突然に来る。
ある日いつものように栗駒山に出かけていると、カメラの様子がおかしい。
ディスプレイがつかなくなったのである。
角度を変えればつくのであるが、とにかく寿命を迎えてしまったのである。
寿命というか、私が結構雑な扱いをしたり、三脚の上に置いたままほかの作業をしていたら風に吹かれて倒れたりしたことから、
私自身が殺してしまったような気がしていた。
やるせない気持ちでいっぱいになった。
修理費用は中古で購入したほうが安いような価格になってしまい、断念した。
愛するペットが急にいなくなってしまったような気持ちに包まれた私は、
その状況を整理するのに精いっぱいであった。
思い出から、作り出す。
私は今、今までとは違う場所に立たされている。
カメラを持たず、写真に向き合う
そんな場所にいるのだと考えている。
彼との、カメラとの思い出を振り返り、
自分に足りなかったもの、自分らしさというものを
振り返る期間にしたいと思うと同時に、
カメラというものとの決別の時期も近いのだと感じている。
そんな今日この頃である。
またあなた方に私の見た世界を届けられるまで。
アディオス